らくがきスター

らくがきへの敬意

らくがきは、一見、子供の遊びや一時的な気晴らしとして認識されがちですが、私はそれを、制約から解放された自由な思考の流れの象徴として捉えています。この「自由な思考の流れ」が私たちにあるクリエイティビティを活性化してくれるものだと考えています。

受講生の作品

人参の王様

テン・ビン様

らくがきスター

らくがきスターは、各自が感覚を自由に展開し、表現の喜びに触れることを可能にしたアートプログラムです。このプログラムは学校法人西濃学園という、不登校生の自立を支援する機関にて実践されており、絵が描けないと思っていた生徒たちが「らくがきスター」を通じて作品を生み出し、展示会まで開催することができるまでに至りました。

背景

私たちの思考は、簡単に凝り固まってしまう傾向があります。その要因の一つに、感覚をフルに活用していないことがあります。感覚を用いることにより思考がほぐされることから「らくがきができる在り方」をベースにしたアートプログラムを開発しました。

らくがきができる在り方をリスペクトした理由

らくがきは、描くという視点が一般てきですが、その在り方を見た時、リスペクトが生まれてきました。その理由は、簡単そうに見えて「思考が柔軟」じゃないとできないからです。この在り方の領域は、人類のためになると確信しました。しかし、その領域の価値が見過ごされ、軽視されやすくなっている社会性が見えてきました。そこから見えてきたことは、人間らしさの低下による、幸福度の低下です。今現在、私たちは利便性や生産性に左右され、人間らしさを失い続けている可能性があります。無駄を省いても無駄が生まれる世界で、利便性や生産性が進みすぎると、実は大切な視点から離れやすく、私たちには心があるのにも関わらず機械的な社会性が高まってしまいます。

人間だから人間らしいのではなく、形は器であり、大切なのは「心」なのではないかと改めて感じ、そして、人間らしさとは、人間らしい「心」だとした時、その人間らしさを見つけ、感じるためにもやはり思考の柔軟性が大切になってくることを改めて知りました。

今現在、人類と「らくがき」の関係性は「上手」や「下手」の評価軸で見られがちな傾向があります。これもやはり利便性や生産性の影響を受けています。この事実から痛感したことは、やはり私たちは、そのようなことから影響を受けない視点を育む重要性です。その視点により、今までなかった視点ができて、新たな選択肢が生まれ、このような利便性や生産性に関与されない領域と、社会通念が交わり、私たちに必要な人間らしさが見えてくるのではないかと思っています。そして私が思う「らくがき」の真髄は技術的な完成度を超え、個々の表現や思考の流れを自由に展開することができる領域にあると思っています。それは、個性と創造性が無限に広がる領域です。その世界から自分で選ぶことができる豊かさを知って欲しいと思っています。

概要

らくがきスターは、思考の硬直化を解きほぐし、思考の柔軟性を高めるための取り組みです。このプロジェクトの目的は、個々の思考が固定化することを防ぎ、それぞれの人が前向きに生きる力を持つことを促進することにあります。硬直化した思考は容認性を下げ、些細なことが原因で争いや摩擦を引き起こす、窮屈な状態を生みやすい性質があります。私は「らくがきスター」を通じて、自由な発想を楽しみ、クリエイティビティに富んだ人材を育てることを目指しています。

コンセプト

私たちはそれぞれ、独自の感覚を持っています。しかし、ある時からその感覚を活用することより思考を優先する傾向が出てきて、それにより、「感覚的な判断」の重要性を見落としてしまいがちです。

感覚は使用しないと鈍くなり、それがさらに感覚の使用頻度を下げる悪循環を生み出します。しかし、感覚を継続的に活用することで、より自分自身の直感や感性と繋がることが可能となり、その繋がりが自分自身の中にある非言語的な領域を、その人の人生に反映しやすくしてくれます。これは心の豊かな生活に繋がっています。

自由に落書きができる状態というのは、子供の頃に誰もが持っていた成長と共に忘れがちな大切な力です。この「大切な力」をまた思い出すための時間を設けることで、柔軟な思考力や穏やかな時間を過ごす力を育むことができます。「らくがきスター」は、心地よい価値観を保つことができ、創造性に溢れた人材を育成することを目的として生まれました。

らくがきスター詳細

絵の上手い下手とかとは違う方向性を大切にしています。例えば「答え」などそもそもお構いなしの子供達の絵を見て、感動することもあります、また、不意にこぼしてしまった絵の具の染みを美しいと感じることもあったり、他にも、学校の授業中に気楽に手を動かして落書きをしていたらそれが良く感じたり、このような要素は沢山ありますが、それらは一般的にはなぜか価値としては認めにくい認識にありますが、「らくがきスター」ではこの時起こっている要素を大切にします。それは感覚は思考と繋がっているので、感覚を沢山使うことで、思考を刺激しほぐしていくということです。「らくがきスター」は感覚的に思考するという体験です。インスピレーションや直感を通していろんな視点に出会って行きます。感性と直感と発想が画材に変わる瞬間を楽しめる時間にしたいと思っています。

ここでは、特定の技術や完成度を追求することはありません。心地よく色と線を操ることに焦点を当て、感情を色に変換し、それをアートに昇華します。無心に楽しみ、感じるままに「らくにかく」ことを優先します。例えば、「自由に噴火する山」や「木、滝、海、空」などの簡単なテーマを描くことで、絵描きに対する苦手意識を徐々に取り除いていきます。

色鉛筆を用いて、基本的な形状「○△□」から連想するモノを描く練習をします。例えば、○は太陽やスイカ、△は人参やトライアングル、□は窓やチョコレートなど、思いつくものを自由に描いていきます。

前ステップで連想した形を組み合わせ、新たな形やイメージを作り出します。これにより、想像力と創造力が更に刺激されます。

思考や感覚が自由になってきたと感じたら、オリジナルのキャラクターの制作に取り組みます。これは、自分自身の内面を探求する、自己表現における大切なステップです。

キャラクターのコンセプト、題名、キャッチコピーを考えます。ここでは、創造的なアイデアを具現化し、他者に伝えるための論理的な枠組みを作り出すことが求められます。

作成したキャラクターを元に、8コマから10コマ程度のストーリーを想像し、絵コンテを作り始めます。これにより、物語の流れと組立て方を学びます。

作品が完成したら、展示会を開催します。これは、自分の創作物を他人に見せることによるフィードバックの獲得と、他者の作品から学ぶ機会を提供します。さらに、作品を通じて他者とのコミュニケーションを図ることで、自己表現の意義と喜びを深く理解することができます。

展示会の後は、自分の作品と他者の作品を見返し、反省点や学びを見つけ出します。次に何を描きたいのか、どのように改善していきたいのかを考え、次回の「らくがきスター」へのステップとします。

必要なもの

色鉛筆、画用紙、コピー用紙

あればより良いもの

アクリル絵の具

活動実績

今現在西濃学園高等学校にてらくがきスターを週1回、非常勤講師として高校1、2、3年生に50分の授業をさせていただいています。

R4年2月3日〜2月13日にこの作品をイオンモール大垣2Fギャラリーにて展示会開催。

次回R5年10月31日〜11月12日 モレラ岐阜にて展示会開催予定。

らくがきスターの全体図

らくがきスターギャラリー