私にとって「双葉」とは、日常で見落とされがちな、身近にある大切な「当たり前」を表すシンボルです。毎日の生活を、少し丁寧に感じてみようとすると、そこには普段気づけていなかった大切な「当たり前」が見えてくるように思います。
それは例えば、慣れ切ってしまっていた家族との時間に、改めて感謝をすることであったり、または、疲れた心をふいに癒してくれる美しい景色(毎夜、空に佇んでいる月のような)に改めて出会うようなことなのかもしれません。
私は「双葉」について、「当たり前」の日常に対して「これって本当に当たり前なのかな?」というようなある種の疑問を、自分自身にも、そして社会にも、改めて問いかけるものであって欲しいと考えています。身近なものの大切さに改めて気づくということ。
当然のことのようですが、案外出来ていないように感じています。自分たちが「当たり前」に過ごしている、その奇跡的な日常を丁寧に考えてみる。そんな当たり前のことを、社会に対して、改めて提示していきたいのです。
私、土井田一将は、「双葉」をテーマにした展覧会『双葉を通して見る世界』を度々行っています。コンセプトは「後悔はするもの。でも減らせるもの。」です。大切な人が身近にいる。大切なものが心の中にある。実は、これは凄いことです。
ただ、私たちが暮らす日常はたくさんの情報で溢れていて、そんな中で暮らしていると、身近にあるそういった大切な人やものが見えづらくなってしまいます。こういったことをふと思い出す時間を、社会の中に作って行きたいと、私は思っています。
これが『双葉を通して見る世界』の展覧会です。そこでは過去を振り返り、伝え忘れた、やり残した、ありがとう、ごめんなさいを探してもらいます。それは、しなくてもよい後悔を減らしてくれる、身近にある大切な「当たり前」に気付く時間です。
展覧会の空間を感じてもらう中で、来場者の方にはあるアクティビティをしてもらいます。
これは〈身近な大切な人を思い浮かべてもらい、その人宛てに、普段伝え忘れてしまうことなどを「双葉ハガキ」に、やり忘れていたこと、してあげたいことなどを「双葉チケット」に書いて、それを実際に届けてもらう〉という活動です。
気持ちと行動をきちんと届ける事で、変わる未来が確実にあります。この展覧会では、少しでもそのお手伝いができれば幸いです。
私たちは、特別なことをいつの間にか「当たり前」だと思ってしまいがちです。その中に〈伝える〉という、いつも何気なくしている、とても大切なことがあります。
これが上手く機能していないと、私たちは、生きていく中で、心がすれ違い、互いの気持ちが見えなくなってしまいます。現代の生産性重視の社会では、わざわざ人生を振り返り「伝え忘れたことはないかな?」というような、丁寧に日常を省みる時間は簡単に省かれてしまいます。
しかし、心を大切にしようとする視点、その世界から見ると、自分の気持ちを掘り下げるというのはとても大切な時間です。そのような時間の中で見えてくる〈伝え忘れ〉を、少しずつなくしていくだけで、人生は豊かになっていく。そう思うのです。双葉ハガキは人々の〈伝え忘れ〉を減らすために作りました。
私たちは、コミュニケーションがすれ違うことで、時に修復不可能なほど、互いの心を壊してしまいます。過去を振り返り、その思いに気がついた時、双葉ハガキで、今の素直な気持ちを、相手に届けてみてほしいと思います。そこにはもしかしたら、「ありがとう」や「ごめんなさい」というような、簡単だけどなぜか言い出しにくい、そんな日常の難しさが現れてくるかもしれません。
簡単な言葉でも良い。〈伝え忘れ〉が伝わるだけで未来の後悔はなくなるかもしれないのです。
大切な人へ、「物より心」を贈りたい。この双葉チケットは、心の世界から人生を振り返ってみた時の、大切な人へ「やり忘れていることがあるな」とか「してあげたいことがあるな」というような想いを、実際の行動に変えるためのチケットです。空欄部分には、相手の名前と、やり忘れていたこと、してあげたいことを、書けるようになっています。
身近な大切な人に双葉チケットに書いて是非渡してみてください。〈やり忘れ〉を減らすことは、心のモヤモヤも減っていき、自分の心のメンテナンスにもなっていきます。心を軽くするためにも、必要なことだと思います。実際に行動するというのは、案外難しいものです。
「時間がないなあ」とか「今日じゃなくても良いよなあ」とか「自分がやらなくても良いか」などなど、私たちは、なんとなく先延ばしにしてしまったり、めんどくさいような気持ちになってしまったりすることがあります。
〈やり忘れ〉はそんなふうにして溜まっていってしまいます。双葉チケットはこれを、少しずつでも、減らす為にあります。
〈やり忘れ〉を実際にやってみたら、そこには豊かで温かい時間が生まれるかもしれません。
例)父さん、お母さん、お爺ちゃん、おばあちゃんへ
- 一日デート券
- 温泉へ連れていってあげる券
- お弁当をつくってあげる券
- 好きなご飯を振る舞うお料理券
- みんなでキャンプ券
- 会いたいと思ったらいつでも行くよ券
- 好きな所に連れて行くよ券
- 全身コーディネート券
- お背中流します券
- 肩たたき、マッサージ券
など内容は自由です。相手が喜びそうなことを考えて、相手に双葉チケットを渡してください。
大切な人へ大切な気持ちを送りたい。
これが気軽にできる社会を目指しています。
何かを伝えようとした時、恥ずかしかったり、照れくさい時があります。
大切なことほど、言いにくかったり、伝えにくかったりするものです。
恥ずかしくて、照れくさくなりやすい、私たちは、大切なことをつい、後回しにして、他ごとを優先してしまいやすい傾向があります。
それを重ねると最初は気づいていた気持ちも、いつの間にか他のことの後に隠れてしまい、その存在を忘れてしまいます。
この度、私たち全員に、恥ずかしさやプライドを超えた先にある、普段なかなか言葉や態度で示せなかった気持ちや感謝を、身近な人へ届ける大切な行事を提案したいと思います。
私たちが生きている競争社会では、つい自分のことを優先的に考えやすかったり、先を想像して不安になり、実は大切にしなければいけない「人」や「気持ち」が見えづらくなってしまいがちです。
これは、競争社会の視点では見えないことがあることを意味しています。
これは仕方がないことです。だからこそ、大切なことは、たまに振り返る時間を作ることです。
特に仕事が忙しい時は、なかなか大切な人まで、目が行き届きにくいですが、毎月一日(28日)は今までを振り返り、大切な人に伝え忘れていること、やり忘れていたことがないか考え、あればそれを消化した時、とても素敵な、日々を迎えられるきっかけになるのではないかと思っています。
双葉の日は、忙しい日々の中、つい見落としてしまう大切な「こと」を振り返る日です。
「こと」とは、「伝え忘れ」「やり忘れ」ていることです。
その時思い浮かんだ、「伝え忘れた気持ち」「やり忘れたこと」「直な心」をそのまま、大切な人へ届けてみてください。
恥ずかしさやプライドを超えた先にある。
大切な気持ちを大切な人に届け合う日が私が考える双葉の日です。
もう会えないから伝わらないといつの間にか諦めていませんか?
恥ずかしながら私もその中の1人でした。意味がある、意味がない。
つい生産的に物事を測ってしまいがちですが、その「大切な人」「大切な時間」を思い出すことは、その大切な人と繋がる唯一無二な時間だと思います。
私の場合、母は亡くなってしまいましたが、私の記憶の中にはやはりいます。
それを想うと私は母の温もりを感じます。
そのことに気づいた時のお話しを少しだけ話させてください。
ある日、一人の来場者の方が泣いていました。
自分の展示会場でのことですので、気になり何故か話し掛けてみようと思いました。
その方に、まつわる色々な話を聞かせていただくなかで、自分の活動が、その方を悲しませていることに気づきました。
「自分がしていることは、間違っていたのではないか」と思った時、その方から「あの時、伝えられなかった気持ちを手紙に書いて、お墓に持って伝にいきます」とそのように、おっしゃってくださいました。
その時、今まで私は、「居なくなってしまったら、もうなにもできない」ということだけを考えながらこの活動をしていましたが、「居なくなっても、できることが、まだあったんだ」と、ハッと気づかされたと同時に、居なくても、気持ちを伝えていいんだ。なんて、尊いことなんだろうと思い、心が熱くなったのを、今でも覚えています。
「記憶の中で生きている。大切な時間がある。」
伝わる、伝わらないとか関係なく、その気持ちを形にする(何かに表す)ことは、とても尊く素敵なことだと思います。
思い出す時間に価値があり、記憶の中には確かに存在する。
ただそれを素直に感じればいい。私はその時、この豊さを知りました。 双葉の日は、亡くなってしまった人を身近に感じる日でもあります。